植物4‐ヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ(4-HPPD)のホモロジ ーモデリングを,Pseudomonas fluorescens 由来酵素の構造情報を鋳型として用い て行った.特に大麦由来酵素の立体構造モデルについて詳細な解析を進め,本酵 素の触媒ポケットが非常に良く保存されていることを見出した.また4種の4-HPPD 阻害剤の立体構造を触媒ポケットに挿入することにより,酵素と阻害剤の相互作 用に関わると推測されるアミノ酸をいくつか推定した.こうした知見はモデルあ るいは鋳型の構造情報を用いてコンピュータ上でドッキングを行うといったラシ ョナルな阻害剤設計に道を開くものである.
ピラゾールカルボン酸誘導体の数化合物が土壌潅注処理によりイネいもち病に 対して高い発病抑制効果を示した.これら誘導体のうち,特に3‐クロロ‐1‐メ チルピラゾール‐5‐カルボン酸(CMPA),3‐ブロモ‐1‐メチルピラゾール‐5 ‐カルボン酸および3‐クロロ‐1‐メチルピラゾール‐5‐カルボン酸メチルが高 活性を有し,そのレベルは0.05 mg/ポットにおいてアシベンゾラル‐S‐メチルま たはプロベナゾール以上であった.ピラゾール3位メチル基置換体および4位カル ボキシル基置換体はそれらに次ぐ活性を示した.ピラゾール5位にホルミル基,ア セチル基などのカルボン酸以外の官能基を導入した化合物については低活性であ った.CMPAのin vitro活性については菌糸生育に対しては1000 ppmで,分生胞子 発芽に対しては100 ppmにおいても十分な阻害活性は認められなかった.また,セ ロファン膜上における付着器形成阻害活性についても同様であった.さらに100 ppm 処理において菌糸の色素変化あるいは付着器のメラニン化阻害は認められなかっ た.以上の結果より,CMPAのいもち病予防効果は直接的抗菌活性よりむしろ抵抗 性誘導等による間接的作用による可能性が示唆された.
ネギおよびタマネギ中の有機リン系農薬の迅速分析法を検討した.試料からア セトニトリル抽出後,GPCおよびシリカゲル/PSAミニカラムによるクリーンアップ を行い,パルス方式FPD付きGCにより測定した.GCおよびパルス方式FPD条件の最 適化を図ることにより,従来型GC-FPDに比べてリンの硫黄に対する選択性が向上 し,ネギおよびタマネギ由来の硫黄成分による妨害ピークの出現が大幅に減少し た.特に,高感度化に伴い,試料液を試料濃度(0.25 g/ml)まで希釈することに よって,ほとんどの妨害ピークが消失し,凍結リン酸処理などの前操作を省くこ とが可能となった.添加回収率は61〜105%,相対標準偏差は多くは10%未満,検出 限界は2〜10 ppbであった.本法を市販ネギおよびタマネギに適用したところ,ア セフェート,イソキサチオンなどの農薬が選択的に感度良く検出された.
除草剤抵抗性遺伝子は花粉の飛散や種子の散布によって拡散する場合があり, その動態の把握は雑草防除にとって極めて重要である.本研究では以上のような 見地から,抵抗性と感受性のミズアオイ個体を用いた実験集団を用い,他殖によ るスルホニルウレア系除草剤抵抗性遺伝子の流動について検討した.ミズアオイ の戸外集団では,セイヨウミツバチなど昆虫の訪花条件下において感受性個体に 由来するヘテロ接合体(SR)の割合は10.0〜65.1%となり,推定他殖率は10.4〜67.8% であった.この結果,完全優性を示すミズアオイの抵抗性形質は他殖によって感 受性集団に広がる可能性が高いことが示唆された.
日本農薬学会
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