ペントサキゾン分解性土壌微生物の単離:その特徴と代謝産物(英文)
除草剤ペントキサゾンを代謝分解する微生物を牛久水田土壌より希釈平板を用いて単離した.得られた5菌株の特徴を調べ,またこれらの単離菌によるペントキサゾンの代謝物を同定した.これら5株の単離菌(1B,2B,7B,21B,および9A)は,その形態的および生理的特徴から,それぞれ,Pseudomonas fluorescens,Bradyrhizobium japonicum,2系統のXanthomonas oryzae,およびBacillus sp.と分類あるいは同定された.これら5株の分解菌は好気性菌として分類されるものの,塗抹法ではなく,すべて混釈法を用いて作成した平板から単離された.このことからこれらの単離菌は大気に比べ低い酸素濃度を好むか,あるいは耐える菌株であると考えられた.これらの単離菌は,100倍希釈肉エキス培地中で速やかにペントキサゾンを分解した.代謝産物はそれぞれの菌株により異なっていた.主な代謝物は1Bおよび2B株ではA-0505,7B株ではA-0480,21B株ではA-1374,9A株ではシクロペンチル環がモノ水酸化を受けた2種の化合物であった.A-0505を出発物質として与える試験により,7B,21Bおよび9A株においてはA-0505を中間代謝物とすることが確認された.
非病原性Fusariumの誘導するソライロアサガオの萎凋抵抗性(英文)
サツマイモつる割れ病菌(PF; F. oxysporum f. sp. batatas)はソライロアサガオ(Ipomoea tricolor)に対して病原性を示し,播種後7日後の幼苗に黄化を引き起こした.子葉内に含まれる葉緑素量を定量することにより黄化を定量的に評価した.この子葉の黄化は非病原性Fusarium(NPF; F. oxysporum 101‐2)の胞子の前処理によって強く抑制されることを見出した.またこの黄化の抑制にともなって子葉や葉柄への菌の侵入も抑制されていた.黄化の抑制はNPF培養濾液から菌体を遠心で除いた上澄み液によっても誘導されたが,熱処理した上澄み液では誘導されなかった.また死菌胞子を処理しても黄化の抑制は誘導されなかった.このNPFが有する黄化抑制の誘導に関わる因子は熱に不安定な物質であると考えられた.このソライロアサガオを用いた抵抗性誘導の評価系は扱いやすく,PF,ソライロアサガオおよびNPFの関わる生物間の相互作用の化学的な解析に有用であると考えられた.
[1(2H),2'-ビピリジン]-2-オン誘導体の合成と殺虫活性
種々の[1(2H),2'-ビピリジン]-2-オン誘導体を合成し,チャバネゴキブリ及びイエバエに対する殺虫活性を調べた.その結果,活性の強さは両方の環の3,5位及び3′,5′位の電子吸引性置換基に大きく依存すること,活性発現のためには両方の環の5及び5′位にそれぞれトリフルオロメチル基が必須であることが示唆された.また評価した化合物の中では,ピリドン環の3位に塩素原子,ピリジン環の3′位に塩素原子,フッ素原子またはトリフルオロメチル基を導入した化合物がより好ましいことが判明した.
メトミノストロビンの溶出挙動におよぼす時間制御型溶出性粒剤の疎水性高分子皮膜中に含まれるホワイトカーボンの影響*(英文)
メトミノストロビンを含有する時間制御型溶出性粒剤(TCRG)からの溶出挙動におよぼす疎水性高分子皮膜に含まれるホワイトカーボン(含水無晶形二酸化ケイ素)の影響を調べた.ホワイトカーボンの量が増大するに応じて,ラグタイムが短くなり,溶出速度が速くなった.このように,ホワイトカーボンの量によって,ラグタイムおよび溶出速度が変化したのは,その量によって皮膜の水透過性および引張り強度に変化が生じたためと考えられた.また,統計学的手法によりホワイトカーボンの量から溶出挙動を予測した結果,非線形最小二乗法による3パラメーターロジスティックモデルによって予測が可能であった.
* メトミノストロビン含有時間制御型溶出性粒剤の開発(第3報)
韓国におけるベンズイミダゾール,ジカルボキシイミド及びN‐フェニルカーバメート系の殺菌剤に対する感受性と抵抗性の灰色かび病菌の動態解析(英文)
1994年から1996年にかけて韓国で罹病イチゴ,トマト,キュウリ等から2109菌株の灰色かび病菌を分離し,carbendazim,procymidone,diethofencarbをそれぞれ添加したPDA培地上での菌糸生長を調査する事で各菌株の薬剤に対する感受性(S)及び抵抗性(R)反応を調査した結果,分離した全菌株の3系列の薬剤に対する薬剤反応は6グループ(SSR, SRR, RSS, RRS, RSR, RRR)に分けられた.各反応型の分離頻度はそれぞれ28.7,1.1,28.8,39.4,1.0,0.9%であった.この中でbenzimidazole系及びN‐phenylcarbamate系殺菌剤に対する両剤抵抗性であるRSRとRRR型は韓国では1995年に初めて分離された.3系列全てに対する感受性の菌株やprocymidoneだけに対する抵抗性の菌株は分離されなかった.
メタノール‐リン酸抽出による黒ボク土におけるクロルピリホスの測定(英文)
有機リン殺虫剤クロルピリホスの畑土条件下での残留性を千葉と松戸の黒ボク土を用いて土壌の滅菌処理,温度(15,25,35°C)や水分(20,30,40%)を変えて室内実験により研究した.土壌からメタノールで抽出後,85%リン酸処理によって残留するクロルピリホスを遊離させ,再びメタノールで抽出した.遊離したクロルピリホスは千葉土壌で最大18%,松戸土壌で10%検出されたが,長期間土壌中に残留した.土壌中の半減期は千葉土壌で28日,松戸土壌で14日であり,温度の上昇に伴って分解は速くなった.メタノールで抽出されない残留体は千葉>松戸であり,有機炭素含量と正の相関を示し,土壌有機物への吸着が示唆された.両土壌とも滅菌処理によって分解速度は遅くなったが,遊離するクロルピリホスは酸処理によってあまり差がなかった.
O-アリール-N-アルコキシカルボニル-N-アルキルメチルチオホスホン酸アミドエステルの合成とその殺虫活性(英文)
メチルチオホスホン酸ジクロリドがジオキサン中トリエチルアミンの存在下でアルキルN-アルキルカーバメートと反応して,対応するN‐アルコキシカルボニル-N-アルキルメチルチオホスホン酸クロリドを与えることを見出した.得られたクロリドを有機リン剤の脱離基として適当なフェノールと反応させ12種のO-アリールN-アルコキシカルボニル-N-アルキルメチルチオホスホン酸アミドエステルを合成した.これらの化合物の殺虫活性を調べた結果,ヒメトビウンカ及びハスモンヨトウに対し,O-4-ニトロフェニルN-イソプロポキシカルボニル-N-イソプロピルメチルチオホスホン酸アミドエステルとO-3-メチル-4-ニトロフェニルN-イソプロポキシカルボニル-N-イソプロピルメチルチオホスホン酸アミドエステルはマラチオンと同程度の活性を示した.
ヒメトビウンカの薬剤抵抗性と低感受性アセチルコリンエステラーゼ(英文)
1992年に熊本県,1993年に茨城県で採集したヒメトビウンカの薬剤感受性を検定した結果,熊本個体群は茨城個体群に比べカーバメート剤に対する感受性が非常に低かった.しかし,エトフェンプロックスやイミダクロプリドに対する感受性は両個体群ともかなり高く,両個体群間に差はなかった.茨城個体群は累代飼育している感受性個体群に比べ有機リン剤に対してのみ感受性が低かったが,熊本個体群は有機リン剤とカーバメート剤に対し感受性が低かった.有機リン剤に抵抗性の熊本,茨城個体群のアリエステラーゼ活性は感受性個体群のそれより高かった.熊本個体群のアセチルコリンエステラーゼはカーバメート剤に対し明らかに感受性が低く,また有機リン剤に対する感受性もやや低い傾向を示した.
メトミノストロビンのイネ紋枯病菌の呼吸に及ぼす影響と防除効果(英文)
メトミノストロビン(SSF‐126)のイネ紋枯病菌の呼吸に対する作用特性および防除活性について検討した.本剤はイネ紋枯病菌菌糸(Rhizoctonia solani, isolate AG1-1A)の酸素消費を濃度依存的(EC50=1.8 μM)に阻害し,5 μM以上の濃度でその呼吸を完全に阻害したが,処理90分後には菌体の呼吸活性は回復した.この回復はflavone,flavanone等により完全に抑制されることから,本剤の防除効果には植物体成分の関与が示唆された.防除効果に及ぼす処理時期の影響について検討した結果,接種後処理に比較して接種前処理の防除効果が高く,病害発生前処理が有効であると考えられた.本剤のイネ葉鞘中濃度は処理一週間後まで経時的に上昇し,その後平衡を保った.また,本剤の防除活性は病原菌接種時の葉鞘中濃度に依存するが,2 ppmを超える葉鞘中濃度の増加は防除活性に寄与しないと思われた.
メトミノストロビン含有時間制御型溶出性粒剤における最適処方の選択*(英文)
異なった溶出挙動を有する時間制御型溶出性粒剤(TCRG)を育苗箱施用し,薬害が生じず長期にわたって防除効果を維持する最適なTCRG処方の選択をおこなった.メトミノストロビンのイネ体中濃度が急激に上昇し始める時期は,TCRGのラグタイムとほぼ一致した.また,TCRGを処理した場合,薬害は生じなかった.しかしながら,ラグタイムが2週間程度,溶出速度が約3%/日のTCRG(TC-1)を処理したイネ体中濃度は,ラグタイムが3週間程度,溶出速度が約1.7%/日のTCRG(TC-2)に比して高濃度であり,この濃度に応じていもち病防除効果は長期にわたって持続した.以上の結果から,TC-1を育苗箱施用した場合,薬害が生じず,長期にわたっていもち病防除効果を持続することが明らかとなった.
* メトミノストロビン含有時間制御型溶出性粒剤の開発(第4報)
自活性土壌線虫Caenorhabditis elegans体内におけるエラジタンニン毒性(英文)
ミズキ科サンシュユの新鮮葉から精製エラジタンニン標品を得た.線虫Caenorhabditis elegansを同調培養した.未成熟成虫と抱卵成虫をこのタンニン(10 ppm濃度)に5日間暴露しても運動能に若干の低下が認められたものの,未成熟成虫は死亡せず,抱卵成虫の死亡率も7%に過ぎなかった.しかし,未成熟成虫の性的成熟および抱卵成虫の繁殖能は阻害された.L1幼虫の運動能も低下しなかったが,その成長は阻害された.同濃度下でさらに暴露試験を続けると,抱卵成虫と未成熟成虫の死亡率は急激に高まり,10日目で未成熟成虫の死亡率は56%,抱卵成虫で78%に達した.しかし,L1幼虫は死亡しなかった.1 ppm濃度下でL1幼虫の成長が若干阻害された.1000 ppm濃度下でなお生存していた抱卵成虫の内臓は溶解・消失していた.しかし,体内での卵割は認められた.
自活性土壌線虫Caenorhabditis elegansに対するガロタンニンおよび縮合型タンニンの致死活性(英文)
我々は先に,3-(α-メトキシベンジル)イソオキサゾール誘導体が,殺菌・殺虫活性を有することを報告した.本報告では,3-(α-メトキシベンジル)イソオキサゾール誘導体の殺菌・殺虫活性発現における鏡像異性の効果を調べるため,5-[2-{4-(3,4-ジクロロフェニル)-2,3-ジアザ-1,3-ペンタジエニル}-α-メトキシベンジル]-3-メチルイソオキサゾールの鏡像異性体を合成し,それらの立体配置をX線回折法で決定した後,キュウリうどんこ病,キュウリべと病およびモモアカアブラムシに対する活性を評価した.その結果,いずれの場合もR体の活性は,S体よりも10倍以上高かった.
エトキサゾールの安全性を評価するため各種毒性試験を実施した.エトキサゾールの原体および10%フロアブルはラットおよびマウスにおける急性毒性は低く,いわゆる普通物に該当する.
眼および皮膚に対する一次刺激性,皮膚に対する感作性では,10%フロアブルで眼に対して極軽度の刺激性が認められたのみである.
ラット,マウスおよびイヌを用いた亜急性および慢性毒性,発がん性試験では検体投与による影響として,肝の臓器重量の増加,腫大,小葉中心性肝細胞肥大およびこれらを反映する血液生化学的測定項目の変動等が認められたが,いずれの動物種においても催腫瘍性は認められなかった.
ラットを用いた繁殖性におよぼす影響試験,ラットおよびウサギを用いた催奇形性試験では,繁殖性におよぼす影響および催奇形性は認められなかった.
細菌を用いた復帰変異原試験,DNA修復試験および培養細胞を用いた染色体異常試験では,いずれにおいても変異原性は陰性であった.
薬理試験では,エトキサゾールが摂取された場合に重篤な急性中毒の発現する可能性は低いが,非常に大量に摂取された場合には可逆的な抑制性の症状が発現する可能性が示唆された.
エトキサゾールは平成10年4月27日に10%フロアブル剤が果樹,野菜,花卉のダニ剤として登録を取得した.本剤は定められた使用方法および注意事項を遵守することにより,安全で有効な農業資材である.
日本農薬学会
http://wwwsoc.pssj2.jp/pssj2/index.html
Copyright (C) 2003 Pesticide Science Society of Japan. All rights reserved.