今回のシンポジウムは茨城県ひたちなか市で開催された.今回は会場ホテルに泊まり込みのシンポジウムとなり,参加者は234名であった.その中で海外からの参加者は12名で,韓国4名,シンガポール4名,ドイツ3名,オールトラリア1名であった.今回,環太平洋農薬学術交流シンポジウムと日程が続いてしまったため,海外からの参加者が例年よりいくらか少なかった.
昨年同様,シンポジウムは特別講演,技術研究発表,フォーラム,ポスターセッションの4部構成で運営された.
特別講演では,まず「茨城県における主要園芸作物の病害虫防除の実際と農薬施用技術」との演題で茨城県農業総合センター園芸研究所の千葉恒夫氏より茨城県における主要作物の病害虫防除の現状と,さらに今後農薬に求められる点について講演を頂いた.次いでClariant
GmbHのRalf Zerrer氏に“New Surfactants in Pesticide Formulations as
Additives and Adjuvants in Europe”との演題で,ヨーロッパにおける農薬製剤の現状,新しい製剤開発の動向とアジュバントについて講演を頂いた.最後に(社)農林水産航空協会の斎藤武司氏に「ヘリコプター(有人,無人)による病害虫防除の現状と課題」との演題で有人ヘリコプターによる航空散布の現状,散布技術,環境との係わり,利点と今後の課題,さらに無人ヘリコプターの現状,散布形態と装置,水稲以外の作物への利用拡大,農林水産航空協会の役割等について講演を頂いた.
フォーラムでは,まず「水稲の播種時育苗箱農薬施用に使用する施用機の要件」との演題で生物系特定産業技術研究推進機構の戸崎紘一氏より,今後普及すると予想される播種時育苗箱施用に必要な施用機についての課題が示された.次いで住友化学の古田リツ子氏より「FAO/CIPAC
Meeting参加報告」として第29回FAO Informal Meeting,CIPAC Symposiumおよび第43回CIPAC
Meetingの報告がなされた.最後に,戸崎紘一氏より「アメリカにおける少量散布技術」としてアメリカでの技術が紹介され,日本での畑作少量散布への動向が紹介された.
技術研究発表の部では界面化学,放出制御,有効成分安定性,副資材,新製剤,製造に関する10件の発表があった.その内4件が大学からの発表であり,例年にない傾向がうかがわれた.また,ポスターセッションでは製剤機械,界面活性剤を中心に9件の発表が行われた(発表題目は表の通り).今回シンポジウムでは,泊まり込みであったこと,またポスターセッションを第1日目に加え2日目昼食の後にも設定したこと,さらに大学からの基礎的,学術的な発表があったことなどから,発表での質疑応答ばかりでなく,ポスター会場やロビーで技術研究発表者,ポスター発表者との活発な質問や討論が行われた.
今回のシンポジウムでは,農薬製剤の現状と今後の動向,製剤開発,製剤製造,製剤施用技術,施用機器,資材の安全性と性能といった幅広い発表があった.安全性,省力化,高性能化が求められている中,研究開発に係わる研究者が一堂に集まり各分野について熱心な議論が行われた.
本シンポジウムを盛会裡に終えることができましたのは,ご多忙中にもかかわらず,特別講演をお引き受け頂きました諸先生方をはじめ,フォーラム,口頭およびポスターで技術研究発表をして頂いた多くの方々のお陰と幹事一同深く感謝しております.
なお,次回は徳島県徳島市で平成12年11月9日〜10日に第20回記念シンポジウムとして開催されることになっております.多数の方々の参加をお待ちしております.
(日本バイエルアグロケム(株)磯野邦博)
T1. 高分子電解質の積層による有機薄膜の作成と複合粒子の調製
°佐藤慎也,古澤邦夫(筑波大学化学系)
T2. ヘテロ凝集法によるシリカ‐PCベシクル複合粒子の形成
°楊 博,木瀬秀夫(筑波大学物質工学系),松村英夫(電総研),古澤邦夫(筑波大学化学系)
T3. ポリ(乳酸‐グリコール酸)ミクロスフィアからのパルス型薬物放出
―PLGAのモノマー組成が薬物放出挙動に与える効果―
°牧野公子,茂木貴央,田沼淳一,大島広行(東京理科大学薬学部),安藤静敏,塚本桓世(東京理科大学理学部)
T4. 貯蔵タンクに保存された製剤中の分解性化合物の濃度変化におよぼすターンオーバー速度の影響に関する理論的考察
佐藤達雄(日本モンサント(株))
T5. 近赤外分光法による造粒物の含量均一性の評価
栗本一平,°寺下敬次郎,宮南 啓(大阪府立大学工学部)
T6. 粉剤の有効成分安定性と増量剤クレーの性質について
°佐藤正志,西原 毅,高橋優子,小林好和,小竹森正人(山陽薬品(株))
T7. 乳化性に優れた高級アルコールエトキシレート
°板山 博,谷口五十槻(三洋化成工業(株))
T8. 生物活性向上剤―原体の効力を最大限に発揮させるために―
島田昌和(ローディア日華(株))
T9. 「ムカデカダン」の開発
°藤井真吾,井上裕章,池田和幸,友井隆司(フマキラー(株))
T10. フルチアセットメチルの製剤化研究
°山下早瀬,藤田茂樹,池内利祐,平林義則,加藤 進(クミアイ化学工業(株))
P1. The Physical Chemistry of Sulfonated Kraft Lignin and its Relationship to the Pore Structure of Extruded WDG's
H. T. Delli Colli and I. W. Doering (Westvaco Corporation)
P2. エマルション型農薬製剤における乳化処理の効率化
―PUCコロイドミル設置による乳化時間短縮および品質向上―
山口雅嗣,高原敏之(日本ボールバルブ(株))
P3. 押出し造粒機の前処理と顆粒摩損度の関係
小泉一郎,長崎龍生,津張正光,大迫義文(不二パウダル(株))古川純平,沼 徹哉,綿野 哲(大阪府立大学工学部)
P4. 破砕転動造粒機(ニューグラマシン)
大原健伸((株)セイシン企業)
P5. Clariant-waxes for Crop Protection Formulations. Waxes from Clariant can considerably improve the effectiveness of pesticides
Hiroshi Nagasawa (Clariant Japan K.K.)
P6. Synthetic Dispersants for Granular Formulations
Dirk Hoorne (Uniqema Singapore)
P7. ダイノーミルECMについて
新丸和也((株)シンマルエンタープライズ)
P8. 湿式粉砕機LMZ,LMK,ラボスターによる微細化
岡崎正明,鈴木博之,竹内信治(アシザワ(株))
P9. 小粒径・大量生産型造粒機 横押出連続造粒機グラニュマスター
近藤直樹((株)大川原製作所)