日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文24巻1号

アラクロール毒性試験の概要



日本農薬学会誌 24, 75-82 (1999)

アラクロールは,米国モンサント・カンパニーが開発した一年生イネ科雑草および一部の広葉雑草を対象とする畑作用除草剤である.動物実験の結果,本剤の哺乳動物に対する急性経口,経皮,吸入毒性はいずれも軽微で,眼および皮膚一次刺激性は低い.モルモットを用いた皮膚感作性試験において陽性の反応が認められた.亜急性および慢性毒性試験の結果,主として肝臓および腎臓に検体投与による影響が認められたが,これらの影響には閥値が存在した.ラットを用いた慢性毒性/発がん性併合試験において腺胃,鼻部および甲状腺の腫瘍が認められたが,腫傷発生のメカニズムに関する試験研究の絡果,これらの腫傷は闘値の存在する非遺伝子傷害性の作用によって引き起こされていることが解明されている.これらの腫傷の発生に結びつく前段階の症状には閾値があり,最大耐量以上の用量でアラクロールを投与した動物実験においてのみ認められた.また,鼻部の腫瘍の発生には,ラットにおいてのみ認められる種特異的代謝が関与していた.このようにラットにおいて観察された腫瘍をヒトに外挿することは妥当ではない.この結論は,アラクロールヘの暴露量が最も高いと考えられるアラクロール製造工場の労働肯を対象とした疫学調査の結果,死亡率および腫瘍発症率の増加が認められなかったことからも支持されている.本剤には,哺乳動物生体内における遺伝毒性は認められず,正常な繁殖や発生過租を阻害することもなかった.
ここに要約した毒性試験成績の評価に基づき,ラットにおける慢性毒性/発がん性併合試験における無毒性量0.5mg/kg/日および安全係数100を用い,O.005mg/kg/日のADIが設定されている.
アラクロールは,ラッソー乳剤として昭和45年3月登録を取得して以来,大豆,とうもろこし,落花生,野菜,果樹等において雑草発生前土壌処理剤として広く使用されている.登録保留基準は,麦・雑穀(小麦を除く),大豆,大豆以外の豆類に0.05ppm,いも類,第二大粒果実類,小粒果実類,第一葉菜類,第二葉菜類,根・茎類,てんさい,さとうきびにO.Olppmと設定されている.


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