日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文24巻2号

呼吸鎖キノンを指標としたペンタクロロフェノール環流土壊における微生物群集構造の変化

内田聡子,田中 基,藤江幸一,片山新太

日本農薬学会誌 24, 183-188 (1999)

農薬によりもたらされる微生物群集構造の変化を追跡する方法として呼吸鎖キノンのプロファイル分析が有効な方法であることを,ペンタクロロフェノール(PCP)環流土壌をモデルに用いて示した.20mg/lのPCP溶液の環流によって,土壌微生物バイオマス量の指標である全キノン量は増加し,200mg/lのPCP溶液の環流では減少した.キノン組成では,ユビキノン-10(H2)(10個のイソプレノイド側鎖に2水素が付加されたユビキノン)が20mg/lのPCP溶液の環流で消失し,糸状菌の減少を示した.高濃度PCP溶液(200mg/l)の環流では,微生物群集構造がより大きく変化した.すなわち,メナキノン-7(メナキノンに7個のイソプレノイド側鎖がついたもの)が消失し,ユビキノン-9が出現した.メナキノン-7は,Bacillusのような低GC含量のグラム陽性菌およびCytophaga-Flavobacterium群に属するグラム陰性菌を示し,またユビキノン-9はPseudomonas等のグラム陰性菌を示している.20mg/lのPCP溶液で29日間培養して経時変化を見ると,ユビキノン種が増加し,メナキノン種が減少した.これは,希釈平板法でクリスタルバイオレット耐性菌(グラム陰性菌の指標)が増加したこととよく対応した.


Back