日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文30巻4号

Pyrrolnitrin Interferes with Osmotic Signal Transduction in Neurospora crassa
ピロールニトリンはアカパンカビの浸透圧シグナル伝達経路に作用する


Akiyoshi Okada, Shinpei Banno, Akihiko Ichiishi, Makoto Kimura, Isamu Yamaguchi, Makoto Fujimura
岡田晃佳,坂野真平,一石昭彦,木村 真,山口 勇,藤村 真


日本農薬学会誌 30, 378-383 (2005) [抄録/PDF]

バイオコントロール細菌などにより生産されるピロールニトリン(PN)は,アカパンカビの電子伝達系を阻害すると報告されている.一方,我々はフェニルピロール系剤であるフルジオキソニル(FL)が浸透圧シグナル伝達経路に作用することを報告している.両剤の殺菌スペクトルはよく似ていたが,PNはFL非感受性である卵菌類や酵母に対しても高濃度で抗菌作用を示した.両剤間の顕著な交差耐性はアカパンカビの浸透圧感受性変異株os-1(histidine kinase),os-4(MAPKK kinase),os-5(MAPK kinase)とos-2(MAP kinase)株のいずれにおいても認められた.しかし,PNは25 μg/mlの濃度ではすべてのos変異株の生育を阻害した.両剤を0.1 μg/mlの濃度でアカパンカビの野生株の分生子に処理したところ,分生子の膨潤とバーストが観察された.しかし,高濃度のPNを処理した場合には,os-5株は形態異常を示すことなく発芽を阻害した.また,PNは,FLと同様に低濃度では野生株に対してグリセロールの蓄積を誘導したが,高濃度ではむしろグリセロール蓄積が抑制された.これらのことから,アカパンカビやその他の菌類に対するPNの主たる抗菌作用は,浸透圧シグナル伝達経路のかく乱であると推定され,高濃度での二次的な作用として呼吸阻害様作用をもつと考えられた.


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