日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文32巻3号

Mode of action of Trichoderma asperellum SKT-1, a biocontrol agent against Gibberella fujikuroi
Gibberella fujikuroiに対するバイオコントロールエージェントTrichoderma asperellum SKT-1の作用機構


Satoshi Watanabe, Kazuo Kumakura, Norihiko Izawa, Kozo Nagayama, Takashi Mitachi, Masaki Kanamori, Tohru Teraoka, Tsutomu Arie
渡辺 哲,熊倉和夫,井沢典彦,永山孝三,三田地貴史,金森正樹,寺岡 徹,有江 力


日本農薬学会誌 32, 222-228 (2007) [抄録/PDF]

Trichoderma asperellum SKT-1はイネばか苗病を含む各種イネ種子伝染性病害に対して高い防除効果を示す糸状菌性バイオコントロールエージェントである.われわれはすでにSKT-1株の水中胞子および気中胞子をそれぞれ商品名「エコホープ®:登録番号21009号」「エコホープドライ®:登録番号21434号」として商品化している.本研究では,SKT-1とイネばか苗病菌であるGibberella fujikuroiにREMI(restriction enzyme mediated integration)法によって,両菌株のGFP(green fluorescent protein)導入株を作成した.GFP導入G. fujikuroiを接種したイネ種籾は,育苗を行うことによってイネばか苗症状を示した.GFP導入T. asperellum SKT-1の胞子懸濁液へのイネ種籾の浸漬処理は,イネばか苗病に対して高い防除効果を示した.さらに,SKT-1株とG. fujikuroiのin situでの相互作用解析を両菌株のGFP導入株を用いて,CSLM(confocal scanning laser microscope)観察を行った.GFP導入G. fujikuroiを接種したイネばか苗病罹病籾を,GFP導入T. asperellum SKT-1株の胞子懸濁液に浸漬処理し,催芽を行ったところ,催芽処理24時間後に両菌の接触が観察され,イネばか苗病菌の菌糸中のGFPの消失が観察された.さらに,催芽処理5日後,無処理籾では子葉鞘中に観察されたイネばか苗病菌の菌糸が,SKT-1株処理籾では観察されず,代わって,子葉鞘表面にSKT-1株の菌糸が観察された.一方,野生株を用いた電子顕微鏡観察では,SKT-1株の菌糸の伸長とともに,イネばか苗病菌の菌糸細胞壁の溶解が観察された.これらの結果から,SKT-1株の主たる作用機構は,SKT-1株の菌糸がイネ胚部位でイネばか苗病菌の菌糸に接触し,イネばか苗病菌の菌糸を溶解することによって,発病を抑制していると結論した.


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