日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文32巻3号

Toxicological overview of a novel strobilurin fungicide, orysastrobin
新規殺菌剤オリサストロビンの毒性概略


Bennard van Ravenzwaay, Masako Akiyama, Robert Landsiedel, Heinz Kieczka, Georgia Cunha, Steffen Schneider, Uwe Kaspers, Wolfgang Kaufmann, Masaki Osawa
Bennard van Ravenzwaay,秋山仁子,Robert Landsiedel, Heinz Kieczka, Georgia Cunha, Steffen Schneider, Uwe Kaspers, Wolfgang Kaufmann,大澤正樹


日本農薬学会誌 32, 270-277 (2007) [抄録/PDF]

オリサストロビンは稲の主要病害菌に有効な殺菌剤である.急性毒性は中程度であり,皮膚刺激性,眼刺激性および皮膚感作性はみられなかった.ラットおよびマウスの慢性毒性試験で,十二指腸において鉄イオン吸収増加に伴う上皮の増殖が,またラット慢性毒性試験の雄で,甲状腺において甲状腺ホルモン合成促進による濾胞細胞増殖がみられ,腫瘍発生率の増加につながった.それらはいずれも二次的な,適応変化であり,また可逆的な変化であった.以上のような変化はその作用機序が明確な閾値を示す可逆的なものであり,in vivoでの変異原性はなく,ラットの甲状腺刺激ホルモン増加に対する反応の過敏性を考慮すると,オリサストロビンのヒトに対するがん原性リスクを示すものではないと考えられる.また,本剤は生殖に及ぼす選択的な毒性はみられなかった.ADI(1日許容摂取量)は,ラット慢性毒性試験での無毒性量である100 ppm(5.2 mg/kg/日)を根拠として,安全係数100で除した0.052/kg/日であった.


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