日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文33巻1号

Role of ethylene in abnormal shoot growth induced by high concentration of brassinolide in rice seedlings
高濃度のブラシノライドによって誘導されるイネ茎葉の異常成長に対するエチレンの関与


Nguyen Minh Chon, Naoko Nishikawa-Koseki, Yasutomo Takeuchi, Hiroshi Abe
Nguyen Minh Chon,古関(西川)直子,竹内安智,安部 浩


日本農薬学会誌 33, 67-72 (2008) [抄録/PDF]

高濃度のブラシノライドをイネの幼植物に投与すると,新葉の葉鞘が短くなり,葉の数が増加するという異常な形態になった.この現象に,ブラシノライドを投与したことによって生じる内生エチレンおよびエチレン生合成の過程で生じるシアン化水素が関与している可能性があるかどうか調べるために,オーキシン型除草剤であるキンクロラックおよびヒエを同様に試験し,イネに対するブラシノライドの作用と比較した.ブラシノライドにより,エチレンの発生が強く促進され,エチレン発生量と葉鞘の成長に相関関係が見られた.また外生投与したエテホンによって同様に異常形態が誘導された.エチレン生合成阻害剤であるL-α-アミノエトキシビニルグリシン(AVG)により,幼植物の異常成長が部分的に回復した.一方シアン化水素の内生量はβ-シアノアラニン合成酵素の活性が高いためイネにおいては低く,また,外生投与したKCNによって異常形態が誘導されないことから,シアン化水素が関与している可能性は低いと考えられた.これらの結果により,ブラシノライドによる異常成長はイネにおいては生成したエチレンによるものであると考えられた.


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