日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文33巻3号

静岡県で無人ヘリコプターで松林に散布されたフェニトロチオン乳剤の飛散状況ならびに健康影響評価

市川有二郎,本山直樹

日本農薬学会誌 33, 289-301 (2008) [PDF]

静岡県で海岸の松林に対して,松くい虫防除目的で,無人ヘリコプターによるスミパイン乳剤18倍希釈液の散布が実施されたのに伴い,有効成分のフェニトロチオンならびにその活性体フェニトロオクソンの気中濃度,落下量を経時的に調査した.散布区域内,散布区域外にかかわらず検出されたフェニトロチオンの気中濃度は,どの地点,どの時間帯においても生活環境の評価10μg/m3よりも低かった.地上へのフェニトロチオン落下量は,散布区域内の方が散布区域外よりも大きかったが,いずれも推定される経皮毒性の無毒性量よりも小さかった.散布直下の松林の林床部に設置したイエバエは100%死亡したが,散布区域外に設置したイエバエの死亡率は低いか,または全く殺虫効力が見られなかった.また,調査に参加した8名ならびに薬剤散布作業従事者2名の計10名は散布の前後に健康診断を受診したが,いずれの検査項目についても暴露の前後で健康影響を示唆するような有意な変化は認められなかった.


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