日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文34巻1号

秋田県潟上市天王浜山地区で無人ヘリコプターにて松林に散布されたフェニトロチオンMCの飛散状況

市川有二郎,佐々木 碧,田畑勝洋,本山直樹

日本農薬学会誌 34, 45-56 (2009) [PDF]

2006年6月25日に秋田県潟上市天王浜山地区の海岸に隣接した松林に対して,松くい虫防除目的で,無人ヘリコプターによるスミパインMCTM 5倍希釈液の散布が実施された.薬剤飛散状況を把握するために,散布区域内および周辺地域において,経時的に薬剤の気中濃度,落下量を調査するとともに,指標生物として,殺虫剤感受性系統のイエバエを用い,殺虫効果を同時に調査した.また,松の枝葉の薬剤残留濃度の分析を行った.高さ1.5mでの気中濃度は散布区域内で1.85±0.60μg/m3,周辺地域で1.87±0.16μg/m3であり,いずれも生活環境におけるフェニトロチオン気中濃度評価値10μg/m3よりも著しく低かった.散布区域内のB1地点の高さ8mで12.07μg/m3が検出されたが,実質的に周辺住民の健康への影響は小さいと推察された.落下量は散布区域内が最も高く,次いで海側境界,陸側境界の順であった.散布区域内では散布中にフェニトロチオンの経皮毒性の推定無毒性量1690ng/cm2を超える地点もあったが,時間の経過とともに急減した.周辺地域の落下量は推定無毒性量以下であった.フェニトロチオンの気中濃度と落下量の間には一定の関係は見られなかった.ドリフトのバイオモニタリングの指標生物として用いたイエバエの死亡率と落下量の間には相関関係が認められた.散布区域内の松の枝葉におけるフェニトロチオン残留濃度は,針葉が最も高く,次いで1年枝,当年枝の順であった.フェニトロチオン残留濃度は時間の経過とともに減少したが,調査終了後の1ヵ月後まで確認された.


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