日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文35巻1号

Different responses of a solitary (Meteorus pulchricornis) and a gregarious (Cotesia kariyai) endoparasitoid to four insecticides in the host Pseudaletia separata
アワヨトウに寄生する単寄生蜂ギンケハラボソコマユバチと多寄生蜂カリヤコマユバチの4種殺虫剤に対する異なった反応


Shingo Kanzaki, Toshiharu Tanaka
神崎真悟,田中利治


日本農薬学会誌 35, 1-9 (2010) [抄録/PDF]

本研究は,4種類の殺虫剤(フェニトロチオン,サイパーメスリン,ピリプロキシフェン,ピリダリル)を使って,内部多寄生蜂カリヤコマユバチ(カリヤ)と内部単寄生蜂ギンケハラボソコマユバチ(ギンケ)の寄生後の発育段階にそって,それぞれ寄生された被寄生寄主を通した薬剤の影響を調べた.被寄生寄主は,内部寄生蜂によって生理的に調整されていることから,被寄生寄主の解毒代謝能力が変化していることが予測された.それぞれの薬剤の2種の寄生バチの発生・発育に対する影響は,未寄生寄主のLD50あるいはLD95値を用いた.フェニトロチオンとサイパーメスリンは,カリヤでは寄生後のどのステージの処理でも影響が強かったが,単寄生蜂のギンケは,寄生後3日以降の処理では低い死亡率となった.ピリプロキシフェンは,カリヤの発育には影響がなかったが,ギンケでは幼虫期における処理で50 ppm(LD10)より低い値で影響を受けた.パラフィン切片で,ギンケの蛹期での腹部の発育停止によるものと分かった.ピリダリルはカリヤ(卵ミ幼虫期間は約10日)の寄生後7日までのステージで寄主からの脱出に大きな影響を与えたが,8日目以降は脱出し,正常に羽化した.理由はピリダリル処理によって被寄生寄主が動けなくなりえさの摂取が困難であるためと思われた.一方,ギンケではLD50のピリダリル処理で,幼虫脱出・成虫羽化ともに影響が少なかった.多寄生と単寄生ではそれぞれ感受性の違いが見られた.


Back