日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文35巻3号

Carboxylesterases: structure, function and polymorphism in mammals
カルボキシルエステラーゼの分子構造と機能調節並びに新分類法


Tetsuo Satoh, Masakiyo Hosokawa
佐藤哲男,細川正清


日本農薬学会誌 35, 218-228 (2010) [抄録/PDF]

本総説では,カルボキシルエステラーゼの分子構造と機能について概説した.カルボキシルエステラーゼには複数の分子種があり,従来それらは基質特異性の違いに基づいて分類されていたが,その方法では個々の分子種間で重複が多いために明確に区別する事が困難であった.それを解消する目的で,著者らは各分子種の分子構造や機能の違いに基づく新たな分類法を提唱した.2010 年に著者らが提唱した分類法を基本とするカルボキシルエステラーゼ分子種の新分類法が研究者間で国際的に承認された.また,動物および人の各臓器に特有のカルボキシルエステラーゼ分子種の遺伝子発現と,その調節機構についても明らかにした.さらに,カルボキシルエステラーゼ分子種の一種であるエガシンが,有機リン剤に極めて高い親和性を有する性質を利用して,有機リン剤暴露時における新たなバイオマーカーを開発した.この方法は,従来のコリンエステラーゼ阻害法に比べてはるかに鋭敏であることが,動物および人における有機リン剤暴露時の結果から明らかになった.


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