日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文35巻3号

Prodrug approach using carboxylesterases activity: catalytic properties and gene regulation of carboxylesterase in mammalian tissue
カルボキシルエステラーゼ活性を利用したプロドラッグの開発:哺乳動物組織におけるカルボキシルエステラーゼの触媒特性と発現調節


Teruko Imai, Masakiyo Hosokawa
今井輝子,細川正清


日本農薬学会誌 35, 229-239 (2010) [抄録/PDF]

プロドラッグはそれ自体は薬理学的に不活性であり,生体内で薬理効果の強い親薬物に変換される.プロドラッグ化の長所は,標的臓器への薬物の到達,治療効果の最適化,そして,副作用の回避を可能にすることである.プロドラッグ化のための化学修飾には,エステル結合やアミド結合が利用されることが多く,そのため,プロドラッグの生体内変換にはカルボキシルエステラーゼ(Carboxylesterase, CES)が重要な役割を果たしている.CES には基質特異性の異なる複数のisozyme が存在し,その発現組織は異なる.例えば,ヒト肝臓と小腸には,それぞれhCE1 とhCE2 が主に発現し,臓器特異的な加水分解活性に寄与する.したがって,これらの酵素の基質認識性の相違を利用することによって,プロドラッグは理論的にデザインすることができるはずである.しかしながら,CES の発現レベルは個人差があり,その結果,薬理効果の個人間差異を惹起することがある.また,動物種によってCES の発現分子やその発現量は異なるため,前臨床の動物実験で得られた結果からヒトにおける効果を予測することは困難である.したがって,プロドラッグ創薬においては,代謝活性化の中心的役割を担っているCES の基質特異性,種差,臓器差,個人差を把握することは非常に重要である.


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