日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文35巻3号

Carboxylesterases: dual roles in lipid and pesticide metabolism
カルボキシルエステラーゼ:脂質と農薬代謝における二重の役割


Matthew K. Ross, Timothy M. Streit, Katye L. Herring, Shuqi Xie

日本農薬学会誌 35, 257-264 (2010) [抄録/PDF]

ヒトゲノムデータベースでは5 つのカルボキシルエステラーゼ(CES)の遺伝子が報告されていて,そのなかで ces1ces2 は最も解析が進んだヒトカルボキシルエステラーゼ遺伝子である.CES ファミリーに関する知見が増えるとともに,これらの酵素は生体異物や生体内物質の代謝における二重の役割を果たすことが示唆されてきている.コレステリルエステル,トリアシルグリセロール,2-アラキドノイルグリセロールなどの生体内物質はCES の基質として知られている一方で,ピレスロイドのような農薬はCES に代謝される重要な生体異物である.siRNA のような選択的阻害剤を用いた機能解析や遺伝子ノックアウトモデルの研究は,CES の生理的機能の研究に有用な知見を提供し,貧血や動脈硬化などの治療にCES が新規なターゲットになりうることが示唆された.ここでは,既知のCES の生理機能,CES 酵素と生体異物(主に農薬)や脂質との相互作用を検証し,これらの知見が健康問題や病気の治療にどのように応用できるかを議論する.(文責:編集事務局)


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