日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文36巻1号

The mechanisms of phytotoxic action and selectivity of non-protein aromatic amino acids L-DOPA and m-tyrosine
非タンパク性芳香族アミノ酸の植物毒性と選択性の発現機序


Hiroshi Matsumoto
松本 宏


日本農薬学会誌 36, 1-8 (2011) [抄録/PDF]

植物からは種々の非タンパク性芳香族アミノ酸が見出されているが,これらの中でl-DOPA(l-3, 4-dihydroxyphenylalanine)とm-チロシン(l-3-hydroxyphenylalanine)には植物に対する生育抑制活性が見られ,それぞれムクナ(Mucuna pruriens L.)およびオオウシノケグサ(Festuca rubra L.)のアレロケミカルであることが報告されている.本総説はこれらの植物に対する毒性と種間に見られる選択性の発現機序について,最近までの知見を解説したものである.L-DOPAはそれを吸収した根部の生育阻害を引き起こすが,これはメラニンに代謝される際に発生する活性酸素による酸化障害によると推定される.また,植物種間における感受性の差異には,L-DOPAからDOPAキノンに転換するポリフェノールオキシダーゼが関与していると考えられる.この活性の高い種はより多くのL-DOPAをメラニン合成系に導入することにより多くの活性酸素を発生させている.抗酸化物質のL-アスコルビン酸はポリフェノールオキシダーゼ活性阻害を通してメラニン合成を抑制しL-DOPAの毒性を軽減した.m-チロシンの植物毒性は筆者らが最初に報告したが,近年これをアレロケミカルとする植物種が見出され注目された.m-チロシンはL-DOPAと同様に酸化障害を起こしたがメラニン生成量はより少なく,また,L-DOPAに耐性を示す種にも生育抑制活性を示した.このm-チロシンによる酸化障害はL-アスコルビン酸では回復せず,アミノ酸のフェニルアラニンで軽減されることから,その作用機序はL-DOPAのそれとは異なると推定された.m-チロシンのタンパク質への誤った取込みの可能性は低いと考えられ,今後の検討課題である.


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