日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文36巻2号

Studies on the inhibition of plant very-long-chain fatty acid elongase by a novel herbicide, pyroxasulfone
ピロキサスルホンの植物超長鎖脂肪酸伸長酵素阻害に関する研究 新規除草剤ピロキサスルホンの作用機構(第2報)


Yoshitaka Tanetani, Tomonori Fujioka, Koichiro Kaku, Tsutomu Shimizu
種谷良貴,藤岡智則,角 康一郎,清水 力


日本農薬学会誌 36, 221-228 (2011) [抄録/PDF]

ピロキサスルホンは植物の超長鎖脂肪酸伸長酵素(VLCFAE)の阻害剤であり,HRACにおいてK3グループに分類される除草剤である.本報では,植物VLCFAEに及ぼす阻害効果を解析することで,ピロキサスルホンのVLCFAE阻害剤としての性質を詳細に調べた.ピロキサスルホンのイネ,ネズミムギ,食用ヒエ,コムギ,トウモロコシ,ダイズ黄化幼苗から調製したVLCFAEに対する阻害活性は,酵素と薬剤のプレインキュベーション時間に依存せず,その阻害様式は可逆阻害であった.また,感受性植物であるイネ,ネズミムギ,食用ヒエと耐性植物であるコムギ,トウモロコシ,ダイズの間にはVLCFAEに対する阻害活性に差があり,この感受性の違いがピロキサスルホンの作物雑草間の選択性に関わる1つの要因であることが示唆された.さらに,シロイヌナズナFAE1は出芽酵母,イネQ6F365はイネ培養細胞を用いることで,リコンビナントのタンパク質の調製に成功し,おのおののVLCFAEに対する検定系を構築出来た.ピロキサスルホンはFAE1およびQ6F365のVLCFAE活性を低濃度で阻害した.しかしながら,FAE1とQ6F365の阻害様式には大きな違いが見出された.すなわち,ピロキサスルホンのFAE1阻害活性は,酵素と薬剤のプレインキュベーション時間に依存しているのに対して,Q6F365阻害活性は依存していなかった.ピロキサスルホンのQ6F365及び黄化幼苗から調製した植物VLCFAEに対する可逆的な阻害様式は本剤の新しいVLCFAE阻害機構を提示するものと考えられる.


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