日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan

Bioactive l-DOPA induced quinoprotein formation to inhibit root growth of cucumber seedlings
アレロケミカルL-DOPAのキュウリ根部に対する生育阻害におけるキノンタンパク質生成の関与


Muhammad Naeem Mushtaq, Yukari Sunohara, Hiroshi Matsumoto
Muhammad N. MUSHTAQ,春原 由香里,松本 宏


Journal of Pesticide Science 38, 68-73 (2013) [抄録/PDF]

熱帯性マメ科植物のムクナで生産されるアレロケミカルとして知られるL-DOPA(3,4-dihydroxyphenylalanine) は,いくつかの植物種の生育を顕著に抑制する.しかし,その感受性植物種への作用機構については,レタスにおいて酸化障害が関与することは報告されているが,詳細は明らかになっていない.L-DOPAは植物において,ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)もしくは自動酸化により,ドーパキノンおよびドーパミンキノンへと代謝される.本研究ではL-DOPAに対して感受性であるが,レタスと異なり脂質の過酸化障害が見られないキュウリにおける作用機構を検討した.L-DOPAはキュウリにおいて,根の成長を顕著に抑制し,PPO活性の増加,細胞死の増加を引き起こした.また,顕著な遊離システイン含量の低下とキノンタンパク質の増加が確認された.これらの結果から,キュウリへの作用機構はレタスへのそれとは異なり,PPO活性の増加によって形成されるキノン類がシステインと結合してキノンタンパク質を生成し,このキノンタンパク質が生育抑制にかかわっていると推定された.


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