日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文33巻1号

Epoxyalkenyl sex pheromones produced by female moths in highly evolved groups: biosynthesis and its endocrine regulation
進化した蛾類昆虫が生産するエポキシアルケニル性フェロモンの生合成とその制御機構


Tetsu Ando, Takeshi Kawai, Kanae Matsuoka
安藤 哲,河合岳志,松岡可苗


日本農薬学会誌 33, 17-20 (2008) [抄録/PDF]

蛾類昆虫の分泌する性フェロモンは,ボンビコールのような末端官能基を有するタイプIの化合物群(直鎖の炭素数:C10∼C18)と,末端官能基を含まない不飽和炭化水素およびそのエポキシ化物からなるタイプIIの化合物群(直鎖の炭素数:C17∼C23)に大別される.昆虫の種の多様性を反映しフェロモン成分も多様であり,それは生合成の原料ならびに関与する酵素系の違いに起因する.ボンビコールの生合成研究を踏まえ,シャクガ類が生産するタイプIIの性フェロモンの生合成,ならびに頭部食道下神経節から分泌されるホルモン(性フェロモン生合成活性化神経ペプチド,PBAN)による生合成の制御機構に関して追究した.その結果,エポキシアルケニル性フェロモンの前駆体(トリエン)はフェロモン腺では生産されず,またPBANはフェロモン腺が体液中に存在する前駆体を取込む過程を活性化することが判明し,タイプIの性フェロモンでの知見とはかなり異なることがわかった.さらに,PBANをコードするcDNAを同定し,シャクガのPBANは構造もユニークであることを明らかにした.


Back