日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文33巻4号

不確実性を考慮した農薬の確率論的生態リスク評価:水稲用除草剤シメトリンのケーススタディー

永井孝志,稲生圭哉,堀尾 剛

日本農薬学会誌 33, 393-402 (2008) [PDF]

高度な生態リスク評価のためには,毒性や曝露などの不確実なパラメータを一つに決定せずに分布として表現し,確率論的な評価を行うのが望ましいと考えられる.そこで本研究では除草剤シメトリンを対象とし,毒性評価や曝露評価の不確実性を分析することにより確率論的な生態リスク評価を行った.毒性評価では文献からシメトリンの生態毒性試験の結果を収集し,種の感受性分布から曝露濃度と影響を受ける種の割合の関係を解析した.31属の淡水産藻類のEC_<50>値を対数正規分布に適合させ,5%の藻類種が影響を受ける濃度を8.2μg/lと推定した.曝露評価では,環境省によって定義された環境モデル中のPEC算定に用いるパラメータの変動を確率分布として表現し,モンテカルロシミュレーションを用いてPECの取りうるばらつきを解析した.その結果,PECの平均値は0.77μg/1,95パーセンタイル値は2.8μg/1となった.PECの分布と種の感受性の分布の重なりから,ある割合の種が影響を受ける濃度レベルの曝露を受ける確率を計算し,リスクカーブとして表した.結果,5%の種が影響を受ける確率は1.5%と計算された.


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