日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文34巻2号

Mechanism of growth amelioration of NaCl-stressed rice (Oryza sativa L.) by δ-aminolevulinic acid
δ-アミノレブリン酸による塩ストレスイネの成長回復の機構


Narong Wongkantrakorn, Yukari Sunohara, Hiroshi Matsumoto
Narong Wongkantrakorn,春原由香里,松本 宏


日本農薬学会誌 34, 89-95 (2009) [抄録/PDF]

塩ストレスにより生育抑制を受けたイネにおけるδ-アミノレブリン酸(ALA)の軽減作用とそのメカニズムについて検討した.イネ(品種:日本晴)の幼植物をNaClを含む水耕液で栽培した場合生育抑制が見られたが,ALAの前処理を行うと有意な成育回復が確認された.ALAはクロロフィル合成の前駆体であることからクロロフィルの合成増加の可能性を調べたが,増加は見られなかった.一方,活性酸素の消去に働く抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ,カタラーゼ,アスコルビン酸ペルオキシダーゼおよびグルタチオンレダクターゼ活性が増加し,特に,スーパーオキシドジスムターゼを除く3酵素の活性がALAで顕著に誘導されることが明らかとなった.塩類ストレスでは細胞成分の酸化傷害が起こることが知られており,この抗酸化酵素活性増加が成長回復に関与している可能性が考えられたことから,実際の活性酸素生成量および膜系における酸化傷害の指標となるエタン生成量を測定した.その結果,ALA処理植物で成育が回復する条件下において,過酸化水素およびエタンの生成量の顕著な減少が確認された.これらのことから,イネではALAによる活性酸素消去能の誘導がNaClストレスの抑制に働き,成育回復につながっていると結論した.


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