日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文36巻3号

シミュレーションモデル(PADDY-Large)を用いた水稲用農薬の河川流域における挙動予測:千曲川支流域への適用

稲生圭哉,北條敏彦,安納弘親,宮崎さとえ,斎藤武司,朴 虎東

日本農薬学会誌 36, 413-427 (2011) [抄録/PDF]

河川に生息する水生生物を対象とした農薬の曝露評価の基礎データを得るため,水稲栽培地域を流れる千曲川支流において,11種の水稲用農薬(代謝分解物3種を含む)を対象としたモニタリングを2001〜2005 年に実施した.また,これまでに開発した河川流域における農薬動態予測モデル(PADDY-Large)について,育苗箱処理剤や茎葉散布剤への適用拡大や,親化合物に加え代謝分解物の動態も予測できるように改良を行った.育苗箱に処理された殺虫剤カルボスルファンは河川水中からほとんど検出されず,代謝分解物のカルボフランのみ検出された.田植え期前後に使用された除草剤は,シハロホップブチルを除き使用時期に対応した検出ピークが確認され,特にシメトリンが比較的高濃度(最高値: 2.4〜17μgL-1)で検出された.出穂期前の航空防除に使用された殺虫剤トリクロルホン(代謝分解物ジクロルボスを含む)および殺菌剤トリシクラゾールは,散布直後に数十μgL-1 となり,その後急速に減少した.一方,無人ヘリ防除ではこれらの化合物の最高濃度は航空防除に比べて1/10〜1/2 程度となり,ピークも明確には見られなかった.改良PADDY-Large モデルにより各農薬の河川水中濃度を計算した結果,一部で実測値とのかい離が見られ,さらなるモデルの検証は必要であるが,一作期を通した水稲用農薬の濃度予測が可能であることが示された.


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