日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文27巻1号

Influence of Fenitrothion-Exposure on the Metabolic Activity of a Rotifer (Brachionus plicatilis) to Organophosphorus Insecticides
ワムシの一種(Brachionus plicatilis)の有機リン殺虫剤代謝活性に及ぼすフェニトロチオン曝露の影響


Shosaku KASHIWADA, Kazuo MOCHIDA, Yuriko ADACHI, Satomi KIMURA, Yoshihisa OZOE, Toshiie NAKAMURA
柏田祥策,持田和男,足立百合子,木村聡美,尾添嘉久,中村利家


日本農薬学会誌 27, 59-63 (2002)

有機リン殺虫剤fenitrothionに曝露された海産動物プランクトンBrachionus plicatilisは,fenitrothionを含む同種殺虫剤(salithion, dichlofenthion, cyanophos, malathion, diazinonおよびphenthoate)に対する抵抗性を変化させることが明らかとなっている.この変化の原因を明らかにするために,fenitrothion曝露B. plicatilisの農薬消失速度定数(kz 値),生物濃縮係数(BCF値)および農薬分解率を測定した.その結果,fenitrothion曝露B. plicatilisのfenitrothionに対するkz 値およびBCF値は,曝露されていないB. plicatilisのそれぞれ2倍および1/2倍に変化していた.また体内に取り込まれたfenitrothionに対する分解率は78.0%から曝露後には99.9%に増加していた.このことからfenitrothion曝露によって,B. plicatilisのfenitrothionに対する取り込み速度,排出速度および分解速度が増大し,耐性が高まることが明らかになった.同様に他の有機リン殺虫剤についても検討した結果,fenitrothion以外の有機リン殺虫剤に対する分解率も曝露により増大し,ほぼ100%に達していた.本研究により,B. plicatilisに対するfenitrothion曝露は有機リン殺虫剤に対する取り込み速度,排出速度および分解速度のバランスを変化させ,殺虫剤抵抗性を変化させることが明らかになった.


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