日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文27巻4号

Natural Fluctuations in Carbon Substrate Utilizing Activity and Community-Level Physiological Profiles of Microorganisms in Rice Paddy Soils as a Basis for Assessing the Side-Effects of Pesticides on Soil Ecosystems
水田土壌微生物の炭素源利用活性および生理学的群集構造の自然変動―土壌生態系に及ぼす農薬の影響評価に向けて―


Kazuhito ITOH, Takahiro IKUSHIMA, Kumi FUJII, Kousuke SUYAMA, Hiroki YAMAMOTO
井藤和人,生嶋隆博,藤井久美,巣山弘介,山本広基


日本農薬学会誌 27, 360-364 (2002)

土壌生態系に及ぼす農薬の影響を評価するための基準を確立する目的で,無農薬・無化学肥料水田および慣行水田における土壌微生物の炭素源利用活性および生理学的群集構造の自然変動をバイオログGNプレートを用いて測定し,約2年間にわたって調査した.土壌微生物の炭素源利用活性は,両土壌において規則的な季節変動を示し,9月ごろ高い活性が認められた.この活性は土壌の温度や酸化還元電位によって直接影響を受けているようであった.生理学的群集構造は,バイオログパターンのクラスター分析により,8〜12月,1〜4月,および5〜8月の3クラスターに分類された.第1番目のクラスターはさらに2土壌間で異なるクラスターを形成したが,第2,第3番目のクラスターでは区別されなかった.両土壌において,同じ時期には同じ微生物群集構造が形成された.低い土壌温度と還元環境が,第2,第3番目のクラスターの形成にそれぞれ関与しているようであった.以上の知見に基づき,水田土壌微生物の炭素源利用活性および生理学的群集構造におよぼす農薬の影響を評価する際の基準を提案した.


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