日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文28巻2号

Degradation of Ipconazole by Microorganisms Isolated from Paddy Soil
水田土壌から単離した微生物によるイプコナゾールの分解


Takayoshi EIZUKA, Atsushi ITO, Tsuneaki CHIDA
永塚隆由,伊藤篤史,千田常明


日本農薬学会誌 28, 200-207 (2003)

水稲種子消毒用トリアゾール系殺菌剤イプコナゾールの水田土壌中微生物による分解について検討した.分解菌を集積するため,水田土壌をイプコナゾール水溶液で41日間還流後,イプコナゾール含有培地で生育可能な微生物を単離した.単離した微生物を14C‐イプコナゾール0.1µg/ml含む液体培地で28日間培養後,イプコナゾール分解能を調べた結果,細菌39株中1株,放線菌14株中12株,糸状菌14株中7株が分解能を示した.特に,放線菌では8株が,添加したイプコナゾールを90%以上分解した.イプコナゾール分解能の高かった放線菌2株(Kitasatosporasp.A1,Streptomycessp.D16)を用いて,イプコナゾールの代謝分解について調べた.A1株は,液体培地中に含まれる1µg/mlの14C‐イプコナゾールを3日間で80%分解した.同じく,D16株は培養2日で約20%,6日後には99%以上分解した.主要な1次反応は,イソプロピル基メチンおよびベンジルメチレンの酸化であった.A1株およびD16株は,イソプロピル基メチル部位やシクロペンタン環メチレン部位の酸化能も有していた.培養後半には,有機層(酢酸エチル)画分中に高極性の成分が生成するとともに,水層画分中には,1,2,4-triazoleが検出された.アゾール系殺菌剤の微生物分解に関する報告は少ないが,本研究の結果から数種の微生物がトリアゾール系殺菌剤の土壌中分解に関与していると考えられた.


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