日本農薬学会 Pesticide Science Society of Japan
HOME学会誌掲載論文31巻4号

Properties and biological control activities of aerial and submerged spores in Trichoderma asperellum SKT-1
Trichoderma asperellum SKT-1が形成する2種類の胞子のバイオコントロール効果と諸性質


Satoshi Watanabe, Hideki Kato, Kazuo Kumakura, Eiichi Ishibashi, Kozo Nagayama
渡辺 哲,加藤秀樹,熊倉和夫,石橋英一,永山孝三


日本農薬学会誌 31, 375-379 (2006) [抄録/PDF]

われわれはすでにTrichoderma asperellum SKT-1の気中胞子と水中胞子をイネ種子伝染性病害に高い防除効果を示すバイオコントロールエージェント(エコホープ®,エコホープドライ®)として商品化している.活性本体である糸状菌T. asperellum SKT-1は,固体培地上で気中胞子(=分生子)を形成し,液体振とう培養により水中胞子を形成した.それぞれの培養によって得られた気中胞子と水中胞子はいくつかの異なる性質を有していた.気中胞子の厚い細胞壁と表面の不規則なピラミッド状のトゲとは対照的に,水中胞子の細胞壁は気中胞子よりも薄く,表面は円滑であった.また,気中胞子に比べ水中胞子は大きな液胞が明確に観察され,水分含量が高い状態であると考えられた.両胞子の生存性においては,4C,水中保存下の気中胞子と水中胞子の生存性は同等で高い生存性を示していた.乾燥条件下では,水中胞子は1カ月で菌数の減少が観察されたが,気中胞子は高い生存性を維持していた.一方,気中胞子と水中胞子はイネばか苗病に対して,同等の高い防除効果を有していた.以上の結果より,過酷な条件でも保存性に優れる気中胞子と,大量生産性に優れる水中胞子はそれぞれバイオコントロールエージェントとして利用することが可能であると結論した.


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