日本農薬学会

会長挨拶

photo
日本農薬学会会長 三芳 秀人

 このたび日本農薬学会の第23期会長(2017年4月~2019年3月)を仰せつかりました三芳でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 日本農薬学会は、『作物保護や農薬をめぐる諸問題を対象とする学問・技術の発展を通して人類の福祉に貢献すると同時に、地球的規模の人口問題や環境問題などの解決に寄与する』ことを目的に1975年に設立されました。 2015年に創立40周年の節目を経て、創立50周年に向けて新たな歩みを開始したところです。設立の理念は時代と共に色褪せるどころか、益々その意義が問われています。 設立当時と比べて、作物保護に関する研究や技術の水準は大きく進展してきましたが、 当時は予想できなかった新たな課題が山積していることも事実であります。会員の皆さま方におかれては、このような新旧さまざまな課題に取り組んでおられる毎日だと拝察いたします。

 日本農薬学会は、作物保護や農薬科学の幅広い領域をカバーする多様な専門家の一大集団であり、それぞれの領域で日本を代表する専門家として“農薬学会の顔”となって活躍されている会員が多数おられます。 一方、組織としての学会の重要な役割の1つは、多様な専門家が自由闊達に交流すると同時に、新たな人と人との出会いの場を提供することだと思います。そのことによって、会員であることのメリットを皆さまに実感していただけるものでなくてはなりません。 「会員の皆さまにとってのメリットを最大化する」こととして、直ぐにでも実行可能なことは何か?第23期の執行部で話し合った結果、研究助成や渡航費援助の拡充を決定し、29年度から予算計画に反映させました。 また、専門委員会や研究小集会の活動がさらに活性化できるように、予算面や運営面でのバックアップを検討してまいります。会員構成という点から見た時、本会の特色の1つは企業に所属する会員が半数を占めるという事実です。 企業会員の方々に会員であることのメリットを実感していただくことも学会としては重要であり、「企業会員の方々のニーズを汲み上げるために何をすべきか?」を真剣に考えていく必要があります。

 與語靖洋氏(前副会長)を中心とする環境委員会の皆さまの労作業によりまして、学会ホームページ上に『農薬について知ろう』というポータルサイトの完成をみました(平成28年度)。この作業を献身的に担い、 現在もメンテナンスに貢献していただいている方々に心から感謝申し上げます。『農薬について知ろう』は本会の広報活動の一端を担う重要なサイトになっていくものと予想されます。 このサイトでは、農薬に関する情報や資料を網羅的に紹介しています。具体的には、対象者を「小学生のみなさん/一般のみなさん/先生がた/農業・流通業関係者」の4つに分けて検索しやすくなっています。 さらに、キーワードからの検索をしやすくするために、「規制/安全性/薬剤/環境・残留/農業」の5つのカテゴリーに分類されています。農薬関連のことについて調べようと思った人が、 『農薬について知ろう』をまず最初に訪れるようになれば、より正確な科学情報に接することになるでしょう。本サイトはポータルサイトですので、リンク先やそこに記載されている内容の変更には十分に注意する必要があります。 会員の皆さまには“キュレーター”となってアンテナを張っていただき、リンク先の情報に関するご助言を環境委員会(または学会事務局)までお寄せいただきたいと存じます。 農薬学会を上げて『農薬について知ろう』の充実を図ってまいる所存です。

 学会誌に目を移しますと、歴代の編集委員長および編集委員の皆さまの地道なご尽力によって、日本の農薬科学の最新情報を国内外に向けて発信するプラットホームとして定着しています。 昨年の資料によりますと、英文誌(Journal of Pesticide Science)に掲載された論文のPDF(全文)ダウンロード数は、27年度の月平均が6800件、28年度は10200件に達しています。 その内訳は、アメリカ合衆国66%、アジア(日本含む)26%、ヨーロッパ6%、その他2%となっており、JPSに掲載された論文が世界の農薬科学の研究現場で大きな影響力をもっていることが推察できます。 平成29年度からは編集事務局が東京農工大学から京都大学に移動しますが、中川編集委員長を中心に斬新な企画が組まれるものと期待しています。学会誌がより充実したものになるよう、会員の皆さまの一層のご協力をお願いする次第です。

 世界の食糧生産量を人口で割った1人当たりの食糧生産量は1980年頃から伸び悩み、最近ではやや減少傾向です。日本では食料自給率が約40%で低迷し、 食料安全保障は依然として極めて重要な問題です。日本農薬学会の存在意義を見据えた時、持続可能な社会にとって、作物保護に関する研究・技術の継続的な進歩が必須であること、 そして、これを支える日本の研究・技術の水準が極めて高いことを社会に広く認知していただく必要があります。 そのために、幅広い専門分野にまたがる会員各位のご協力をお願い申し上げると同時に、建設的なご意見を学会執行部にお寄せいただきたく、ここにお願い申し上げます。

 

平成29年4月