日本農薬学会

会長挨拶

photo
日本農薬学会会長 松田一彦

2023年4月1日から日本農薬学会の会長を拝命いたしました松田一彦でございます。この場を借りて会員の皆様にご挨拶申し上げます。

日本農薬学会は創立から半世紀近くになり,その時代に柔軟に適応して発展してまいりました。しかし,昨今の合成農薬を抑制する流れは,本会にとって大変厳しい雰囲気を作り出しています。こうした状況の中で,私は「化学農薬を適用した実のある総合防除」を提案・推進いたします。病害虫を効果的に防除するためには,生物あるいは物理的手法だけに頼っていては,安全な食を十分に供給することはできません。適度な残効性があり,従来にも増して安全性・標的病害虫に優れた化学農薬を,独創性のある製剤・施用技術を駆使しながら,生物的手法や物理的手法と併用して初めて,環境に対する負荷が少ない作物保護が達成できるのです。

 

実のある(真に過不足なく安全な食を持続的に提供可能な)病害虫防除を議論する場を本会が創り出すにはどうしたよいのでしょうか。多くの学会がとりくんだ法人化は本会にとっても不可避の課題となっていますが,本会の発展にはほとんど助けになりません。大切なことは,分野のすそ野を広げ,より多くの科学者が忌憚なく当該分野を熱く議論できる,入会して良かったと思えるような学会にすることです。そのためには,理学,工学,情報科学,あるいは医学の専門家も交えて意見を交換できるように本会を改革していく必要があります。また,学術小集会をさらに活発化させ,会員どうしや会員-非会員間の交流を促進する必要があるでしょう。さらにこうした改革が一過的なもので終わらないように,次世代を育成するプログラムを並行して進めなければなりません。国際舞台に次世代を送り,海外の主要組織と太いネットワークを形成する取り組みも大切です。

私の力は微々たるもので,このような理想を一人で語っていても,日本農薬学会の発展はございません。ここに述べた理想を少しでも実現するために,どうか皆様のお力添えをよろしくお願い申し上げます。

令和5年4月