日本農薬学会

農薬デザイン研究会

代表:清田 洋正 [委員]

農薬デザイン研究会は1985年に発足し、関西と関東の農薬会社が交互に幹事となって、毎年テーマを決めてシンポジウムを開催しています。10年ほど前までは1泊2日で、夜を徹しての議論がなされていましたが、現在は日帰りの形で開催しています。これからは、3年に一度程度は一泊二日で開催するべくその準備を進めております。

環境や生物多様性の保全等も含めた安全性確保の観点から農薬に関わる各種の規制が強化され、新剤の開発が年々難しくなってきています。このような状況下においても、日本発の新剤が次々に創出されてくるのは、創薬研究に関わる日本企業の研究者の能力の高さはもちろんのこと、それに加えて学会活動を通したコミュニケーションがその大きな要因になっていると考えています。自分一人だけのアイデアでは、偏ったものとなってしまい、袋小路に迷い込んでしまって抜け出せなくなるところに、他の研究者の意見を聞くことによってそこから脱出できることはよくあります。このようなブレークスルーをもたらしているのが『農薬デザイン研究会』で、創薬にかかわる企業、大学の研究者が気さくに議論できる場を提供していると考えています。毎回、国内外で活躍している有機化学者をはじめ、農薬開発にとって重要な様々な専門分野の方から講演をいただいて、創薬研究に役立てています。また、ポスターによる研究発表を行い、最近は優秀な発表に対して、ポスター賞を授与させて頂いております。

最近、化学物質はすべて悪で、中でも農薬は毒で、無農薬で栽培された作物でないと安心できないという間違った情報が流れています。また、農薬は今のままで十分で、新農薬を開発する必要はないという意見もあります。でも、農薬研究開発を一端中止したらどうなるかを冷静に考えてみてください。これまで使っていた農薬に全く効果がなくなってしまったらどうなるでしょう。お手上げです。実際に大陸から抵抗性のウンカが飛来してきて九州では問題が顕在化してきています。世界的に見た場合、飢餓に苦しみ、餓死する人も現状で、病害虫を防除できなくなった場合には、餓死者が増加することは間違いありません。2050年に地球上の人口が90億に達すると言われていますが、その人口を賄うだけの食料を生産するには、農薬の力は不可欠です。飽食と思っているわが国も、食糧難に見舞われないという保証はありません。このような中で、新しい農薬のシーズを見つけていくのが、『農薬デザイン研究会』の役割と考えています。平成16年の第20回記念研究会では、「農薬デザインの過去・現在そして未来」をテーマとして、それ以降は「リード化合物発見にむけて」、「ブレークスルーをもたらす農薬デザイン」、「Innovation from Leads」、「次世代の農薬デザイン」、「新しい農薬デザインの手法」,「戦略的分子設計による新規作用性化合物の発明」、「未来へ向けた農薬デザイン」というテーマで開催して参りました。今年度の第28回は「21世紀を担う農薬をデザインする~そのヒントを求めて」というテーマを掲げています。このように、本研究会では、いかに農薬を合理的に設計していくかをテーマに掲げ、年々新剤開発が難しくなってきている現状に立ち向かっています。

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